高畑勲監督の遺作「かぐや姫の物語」5月18日に金曜ロードSHOW!でノーカット放送

2018年5月18日(金)21:00~23:49の放送内容

高畑勲監督の遺作「かぐや姫の物語」が、5月18日に日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」にてノーカット放送される。

同作は4月5日に82歳で死去した高畑監督が、誰もが知る「竹取物語」を新たな解釈で描いたアニメーション作品。かぐや姫が誕生し、少女時代を経て美しい姫に成長していくさまを、水彩画のようなタッチで描く。

本作のプロデューサーを務めた西村義明は、放送にあたって「ジブリ第7スタジオのスタッフ達とともに、とても楽しそうに映画を作っていた高畑監督を思い出します」とコメントを発表。「この機会にぜひ日本中の皆さんに楽しんでいただければ」とメッセージを送っている。

西村義明コメント

「かぐや姫はなぜ、数ある星の中から地球を選んだのか。この地で何を思い、どう生きたのか。かぐや姫は、なぜ地球を去らねばならなかったのか」高畑勲監督の3つの問いから、映画「かぐや姫の物語」の企画が始まりました。8年間という長期の制作期間を経て完成した映画ですが、ジブリ第7スタジオのスタッフ達とともに、とても楽しそうに映画を作っていた高畑監督を思い出します。残念なことに高畑監督は亡くなってしまいましたが、最後の長編映画「かぐや姫の物語」を、この機会にぜひ日本中の皆さんに楽しんでいただければと思います。

ノーカット放送のため放送枠を拡大し、通常より約1時間前倒しとなる夜7時56分からの放送だ。

放送に際して、作品への感想や描いた絵など、多くの人が様々なツイートが投稿されている。キャッチコピーである「姫の犯した積みと罰」に関する洞察も興味深い。

この『かぐや姫の物語』に対し「この映画で泣くのは素人だよ!」と声を荒げた人物がいる。そう、高畑の同志である宮崎駿だ。

このエピソードを披露した人物はスタジオジブリの鈴木敏夫だが、長年の付き合いがある彼でも「(発言の)意味がわからない。じゃあ玄人の映画って何なのと思って」と首を傾げる。事実、宮崎は『かぐや姫の物語』の評価を口にしておらず、それどころか噛みつくような発言しか残していない。たとえば、昨年「文藝春秋」2月号に掲載された宮崎・高畑・鈴木の鼎談では、『かぐや姫の物語』の感想を尋ねられた宮崎は開口いちばん、こう話し出す。

「『かぐや姫』を観たときにね、長く伸びた竹を刈っていたでしょう。筍というのは、地面から出てくるか出てこないときに掘らなきゃいけないんじゃないかとドキドキしたんですけど」

作品の感想を訊かれているのに、竹の話。高畑は「真竹だからあれでいいんですよ。孟宗竹だったら宮さんの言うとおりなんですけど、当時、孟宗竹は日本にはまだ入ってきていない。ちゃんと調べたんです(笑)」と反論しているのだが、その後も宮崎は高畑のスケジュール無視の制作スタイルに「いつもそうなんだ(笑)」と苦言を呈し、高畑が本作でこだわり抜いた「線」の表現についても、「たしかに生き生きとしたラフ画を画面にしていくと良さを失うのは、僕らもよく経験することです。でも、ヘボな絵がそれなりに見えるようになるのも、アニメーションなんですよ。それが嫌だったら、アニメーションの仕事をやっちゃいけないと僕は思います」とキッパリ。

これだけを読むと、宮崎と高畑は不仲のようにも見えるが、決してそうではない。むしろ、過去の発言や行動を拾い上げていくと、宮崎はまるで高畑に恋をしているのではないかと思うほどに気になって仕方がないようなのだ。

たとえば、『風の谷のナウシカ』の映画化の際、宮崎が鈴木に出した条件は「高畑勲にプロデューサーをやってもらいたい」ということだった。だが、肝心の高畑は首を縦に振らず、鈴木は2週間も高畑のもとに通い詰めるハメに。そんなある日、鈴木は高畑から大学ノートを一冊手渡されるのだが、そこには映画や演劇のプロデューサー論がびっしりと書かれてあったという。そして最後の一行は「だから、ぼくはプロデューサーに向いていない」。……理論派として知られる高畑とはいえ、さすがにこれでは断りの理由にはなってないだろとツッコまずにいられないが、これに大きなショックを受けたのは無論、宮崎である。酒を口にしないはずの宮崎が「鈴木さん、お酒を飲みに行こう」と誘い出したという。

〈飲み屋に行ったら、宮さん、日本酒をガブ飲みするんですよね。ぼくはもうびっくりしました。それまでぼくが見たことのない宮崎駿です。それで酔っぱらったんでしょう、気がついたら泣いているんです。涙が止まらないんですよ。(中略)そして、ポツンと言ったんです。「おれは」と言い出すから、何を言うかと思ったら、「高畑勲に自分の全青春を捧げた。何も返してもらっていない」。これには驚かされました。ぼくも言葉が出ないし、それ以上は聞かなかった〉(鈴木敏夫『仕事道楽』より引用)

全青春を捧げたのに──。まるで昭和の女が男に捨てられたかのような台詞だ。結局、宮崎の落ち込みの深さを見てしまった鈴木が「宮さんがここまでほしいと言っているんですよ。友人が困っているのに、あなたは力を貸さないんですか」と高畑に大声で怒鳴り、「はあ、すいません。わかりました」と高畑は渋々プロデューサーを引き受けたらしい。

また、宮崎の『となりのトトロ』と高畑の『火垂るの墓』を同時制作していた際には、宮崎は高畑が文芸作品をつくっていることを意識しはじめ、突如「おれも文芸やる」宣言。挙げ句「ネコのバスなんて出してられないですよ、あんなもん出したら文芸作品じゃない」とまで言い始めたから、再び鈴木は頭を抱えることに。だが、困った鈴木が宮崎の”ネコバスやめる”発言を高畑に伝えると、高畑は一言「もったいないじゃないですか」。これは使える!と踏んだ鈴木は、さっそく宮崎に高畑の感想をそのまま伝えると、案の定、宮崎はあっさり「じゃ、出す」と前言撤回したという。

さらに、鈴木が『爆笑問題の日曜サンデー』(TBSラジオ)に出演した際に明かした話によれば、『かぐや姫の物語』制作時も宮崎は自身のスタジオから離れた高畑組のスタジオにも顔を出し、高畑がアニメーターの絵にダメ出しする場面をこっそり隠れて盗み聞き。そして、宮崎は自分の席に戻るなり、高畑がアニメーターに注文していた絵を頼まれてもいないのに描きはじめた。それを仕上げると、くだんのアニメーターのところに出向き「こういう絵を描くんだ!」と教えたのだという。もちろん、この宮崎の行動を高畑は知らない。爆笑問題のふたりは「えー、かわいい!」「片想いの女の子みたい!」と興奮し、鈴木も「宮さんってほんとに一途なんですよ」と解説していたが、これは70絡みのオッサン、いやジジイの話であることを忘れてはいけない。

こうした宮崎の過剰な”高畑ラブ”の様子は、2013年に公開されたスタジオジブリのドキュメント映画『夢と狂気の王国』でも存分に映し出されている。あるときは高畑を賞賛し、あるときは「パクさん(高畑のニックネーム)は性格破綻者」と罵る。──監督のナレーションによれば「宮崎さんは一日に一度は必ずパクさんの話を口にし続けていた」というほどだ。実際、宮崎はあるインタビューで「宮崎さんは夢を見るんですか?」という問いに、「見ますよ。でもぼくの夢はひとつしかない、いつも登場人物は高畑さんです」と答えていたことを鈴木は著書で披露している。一途というよりも愛のかたちが強迫的すぎて、そろそろ恐ろしくなってくる話だ。

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